ラスト・ゲーム番外編

はにかむようにそう言う麻子に、なんだか心にむずがゆさを覚える。

…話す前から、麻子が俺を知ってくれていたのがなんだかこそばゆかった。


「初めて話したの、いつだったかなぁ」

ペラリと次のページを捲り、写真たちに目を落としたままの麻子。



─初めての会話。


「…さぁな」


俺は、ちゃんと覚えていた。








「早水くん!」


まだ入部したての頃、一年全員で先輩たちの試合の応援に行っていた時のことだった。

ニクォーター目の休憩に入り、熱気のこもる体育館から抜け出てお腹いっぱいに吸い込む外の空気。

そんな中いきなり呼ばれた自分の名前に驚き、振り返ってさらに驚いて目を丸くした。


そこにいたのは、瀬川麻子。

一年の女バスの中で唯一知っている女生徒だった。プレーも一際うまく、そして笑顔がとても目立っていたから。


「試合撮ってたりしたんだけど、フィルム一枚余っちゃって。」

せっかくだから一緒に撮らない?とインスタントカメラ片手に微笑む麻子に、俺はただ首を振って「おう」…だなんて不器用な言葉しか返せなかったのだ。


眼孔をつく鋭いフラッシュが眩しくて。


レンズ越しに焼き付けられた二つの影も、ひどく眩しかった。


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