ラスト・ゲーム番外編
ポツポツと傘に雨粒が跳ね返る音だけが無性に耳につく。
いくつものまあるい水滴にのっかられ、重さに耐えきれずうなだれる道端の花。
…二人とも、しばらく無言で歩いた。
ポツリ。
雨粒が一粒傘に入り込んでは、あたしの頬を伝う。
傘の中は、なんだかいつもより…近い。
ふと元の顔を見上げると、ちょうど目があって…
急いで下に伏せた。
「麻子……何か、しゃべれよ」
そっぽを向いたまま発された言葉。
「…元が…しゃべってよ」
そのまま同じようにそっぽを向いて、お返しした。
…また、沈黙。
「…いつもは、猿みてぇにうるさいくせに」
元が意地悪い笑みを浮かべて、あたしの頬をさらにむくれさせた。
傘から、たっぷり中身が詰まった元のカバンがはみ出している。
……ねぇ、元。
口ではそんなこと言ってるけど…あたしのこと、濡れないようにしてくれてるんだね。
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