思いを手のひらにのせて
voice1 出会い
『出会い』

仕事を定時で終え、
その足で「響優人」の
コンサート会場に直行した。

「響優人」はミュージシャンであるが
詩人の肩書きも持つ。

わたしは彼の曲よりも、
むしろ詩に惹かれていた。

作品に漂う切なさが心地よく、
自分の気持ちに寄り添ってくれるような
感覚を覚えるのだ。
 
コンサートが終わり
帰りの電車に乗り込もうとホームを急いだ。

まだコンサートの余韻に
心も体も覆われているような感覚だった。 

感情をリセットする必要がある。

早く座席に腰掛け一息つきたかった。


どこか空いてる席がないかな。


車両全体を見回した。



金曜だから? それとも時間帯のせい?



ほとんど席が埋め尽くされている。

それでもやっと空席を見つけ腰をおろした。 
 
< 1 / 34 >

この作品をシェア

pagetop