思いを手のひらにのせて
「一方的にぼくばかり、しゃべっています。
みなさんから質問があればお聞きします」
 
通訳を通じて河野守は
わたしたちに問いかけた。
 
後ろの席で手があがり、
一人の女性が立ち上がった。

彼女はサークルの会員なのだろう。

手話で質問した。

「子どもの時の夢は何でしたか?」と。
 
「ぼくは野球選手になりたかった。
プロテストを受けに行きました。

一次は受かりました。

でも二次で
『耳が聞こえなくてはダメ』と
不合格になりました。
 
聴覚障害者は
『夢を見てはいけない』と
大人から教えられ育ちます」
 
会場が少しざわついた。

夢を見てはいけない? 

何が言いたいのかわからなかった。
 
通訳者も彼の話に補足説明をしてくれる。
 
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