思いを手のひらにのせて
母の後ろに2人、
友人らしき女性が立っていた。

母は彼女達と後の予定があったようで、
「それじゃ、また」と、わたしたちの
前を横切っていった。

いつも通りの夕食の時間、
母はまだ帰っていなかった。

妹も残業で、
わたしは一人で夕食をとっていた。

しばらくして
玄関先で「ただいま」と母の声が聞こえた。

母も座って夕食を食べ始めた。
 
案の定、母から
「今日一緒にいた彼は誰?」から始まり、
いくつかの質問を受けた。

「そう。耳が不自由なのね。
今はいいかもしれないけど、
障害はやっぱり大変よ。
美緒も生半可な覚悟なら、
早いうちにやめておく方がいいわよ」
 
母の言葉にわたしはひどく不信感を持った。
 
母はわたしが小さい時から
いつも公平だった。

わたしたちが学校で
こんな嫌なことがあったんだと話すと、
いつも親身になって話を聞いてくれた。

弱い者の味方だった。
 
その母からは考えられない
差別的な発言だと思った。
 
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