思いを手のひらにのせて
「お母さん、失礼じゃない? 
障害者を最初から偏見で見ていない?」
 
わたしはなるべく
冷静に抗議しようと思うのに、
つい口調がきつくなっていることを
十分自覚していた。

母が「そうじゃないの」と
反論しようとするのを遮るように
「ごちそうさま」と、
自分の部屋に引き揚げた。
 
次の週のサークルの
帰りの電車の中で、幸太に聞かれた。

「この間、お母さんに何か言われた?」

わたしは少し迷ったが正直に答えた。
 
「ショックだった。
お母さんがあんなこと言うなんて」
 
幸太はじっとわたしの話を聞いていた。

そしておもむろに答えた。
 
「でもそれは当たり前だよ。
お母さんは差別なんてしてないよ」
 
幸太の返事はわたしにとって意外だった。

「耳が聞こえなくなった時、
その時つきあっていた人にも
八つ当たりしちゃってさ。
彼女に何の責任も無いのに迷惑かけたよ」
  
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