思いを手のひらにのせて
30分ほど経った後、
今度はサークルの会員の話が始まった。

話し手の男性は手話を使い、
その横に通訳者が立って、
彼の手話を訳していった。
 
彼は『河野守』と名乗った。

河野の話で
驚かされたことがいくつもあった。
 
聾唖学校に入っても、
手話は教えられてはいない。
口の形を読む『口話』をおそわる。

健聴者と同じように話せるほうが
良いと考えられてきた歴史があるためだ。
 
手話は寮生活の中で
先輩から後輩へと伝えられていった。
 
聾唖学校に入れたのなら
まだ良いのかもしれない。

昔は障害者と言えば
「家の恥」と考えられ
隠すように育てられたものだという。
 
聾唖学校に入れてもらえず、
ただ農作業などの手伝いをするだけで
一生を終える聴覚障害者も
少なくなかったようだ。

そんな背景があり、
手話を使える聴覚障害者は実は
少ないという事実に衝撃を受けた。
 
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