一等星
「そうだよ、ハルカと一緒に大学行けると思ってがんばってるのに…。」
アヤは小さく形の整った口をちょっと噛んだ。
「…うん。私アヤみたいに頭良くないしさ。それにうち母子家庭じゃん。お母さんは大学行けって言うけど、働いても良いかなーなんて…。」
「何だよ働くって。俺だって野球ばっかやってたから全然やべーよ。でもみんなで同じ大学行きたいから頑張ってるのによー。」
「あ…。シュージ、ごめん。俺の第一志望京橋だ。」
リョウがさらっと口をはさんだ。
「京橋ィ?なんでだよ。1学期までは東信って言ってただろうが!」
「いや、東信も候補だけど夏期講習で結構成績上がったからさ。京橋も狙ってみようかと思って。」
リョウはちらっとアヤを見た。
「…アヤはそれで良いの?」
アヤを見ると何食わぬ顔でアイスティーをストローで飲んでいる。
「だってリョウが行きたいんなら仕方がないじゃん。」
「お前、仕方がないって!良いのかよ!京橋っつったら京都だぞ?遠距離じゃねーかよ。」
「別にー。死ぬわけしゃないし。私は大丈夫だもん。」
アヤは遠距離なんて眼中にないと言った感じでポテトを食べている。
本当は強がってるのだと思う。
リョウは少し切なそうな顔でアヤを見ている。
きっとリョウだって寂しいんだ。
「はぁー。訳わかんねーわ。これじゃあみんな高校卒業したらバラバラじゃんか。」
シュージはエネルギーを出しきったようで椅子にもたれてうなだれた。
なんだか空気が重くなってしまった。
「…まだバラバラって決まった訳じゃないじゃん。私も一応勉強してるしさ。東信行けるかわかんないけど大学行くかもだし。」
ハルカがなるべく明るい声で3人に話した。
「そうだよ。俺だって京橋志望してるだけで落ちるかもだし。シュージはすぐ熱くなるからな。」
リョウがシュージを見て笑う。
「あーすいませんね、どうせ俺は熱血野球バカですよ。」
そう言うとシュージはハンバーガーの包み紙をくしゃくしゃに丸めた。
「あっヤバい。もうすぐ塾の時間だ。」
アヤが時計を見て言う。
「じゃあ今日はそろそろ帰るかぁ…。」
シュージがだらだらと立ち上がる。