一等星
続けてアヤとリョウが立ち上る。
アヤとリョウは電車なので、駅前で別れた。
ハルカとシュージは2列になって自転車をゆるくこいでいく。
「なんか、斉藤って冷めてるよなー。『リョウが行きたいんなら仕方がない』なんてさ~。」
シュージが納得いかないといった顔で眉間にしわを寄せた。
「アヤは強がってるんだよ。あんまり寂しいとか人前で言えないタイプだからさ。」
「…。」
シュージは少し黙った。
「…お前も、そうなのか?」
突然シュージがブレーキをかけて自転車を止めた。
「…え?何が?」
「お前も、本当は色々大変だったりするのか?
俺、馬鹿だからわかんねーけど、相談くらいはのれるからよ。その…。」
シュージが少し赤くなる。
お調子者で、クラスのムードメーカーで野球馬鹿で単細胞。
不器用だけど真っ直ぐなシュージ。
1年生から同じクラスで、いつもふざけあってばかり。
だからこうゆう真剣な話になるといつも少し赤くなる。
だから私もこうゆう話はついついはぐらかしてしまう。
「バッカじゃないの?なにマジな顔してんの?
サル顔がますますサルっぽいよ?」
ハルカはそう言ってシュージを冷やかした。
「なっ。てんめー人が心配してんのに、ふざけんなよー!」
ハルカの自転車をシュージの自転車が猛ダッシュで追いかけてくる。
その顔は怒っているようにも見えるが、半分ふざけているように見える。
突然、ハルカがブレーキをかけた。
シュージはスピードを出していたのでハルカを追い越して止まった。
「おい?どうしたんだよ?」
「…今日渡されたプリント忘れてきたかも…。」
「はぁ?明日提出のやつ?ばっかでー。」
「あぁ、やっちゃった…。ちょっととってくる。」
「おぅ。俺も行こうか?」
「いいよ、大丈夫。シュージも今日予備校でしょ?」
「そうだった…。めんどくせー。」
「がんばんなよ!じゃ、また明日ねー!」
ハルカは手を振りながら今来た道を戻っていく。
シュージも一度大きく手を振ると、反対方向に消えていった。