向こう。
「……っ」

何故か涙が零れ落ちて行き、舞瀬を見上げる。
舞瀬は目尻に唇を寄せ、愛おしげに見つめて来る。 
…何でこんなにされているのに、嫌と感じないのだろう。
拒絶も出来た筈なのに。
おかしい。

頭では抵抗をしなければと思っているのに、心がそれを嫌がる。
自分が自分でないようで、怖い。
何とも言えない寂しさが込み上げて来て、また涙が溢れ出る。

「若…斗……」

「凪……?」

ぼやける視界の中で名前を呼ぶ。
舞瀬は俺を覗き込んで来る。
その心配と優しさが込められた瞳を見て、俺は意識を手放した…
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