向こう。
「ほら、食べられるだけで良いから。」

スプーンに乗せたお粥を差し出される。

食べさせてくれるのか?
でもそれはさすがに恥ずかしい。

「自分で、食べる…」

思わず、叫んで拒みそうになったが、頭に響くので、弱い口調になってしまう。
俺は器とスプーンを掴んだ。

「遠慮することないのに。」

「してない…」

お粥を少しだけ口に運ぶ。

「おいしい…」

何の変哲もない、ただのお粥のはずなのに。
その温かさが身体だけでなく、心にまで染み渡って行くようで。
…これが人の温かさなのだろうか。
俺はその心地良い感覚の中、またお粥を口に運んだ。
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