恋は突然に
「ーーーっ!セリ!私はあんたの‥」



「だから、あんたじゃなくて、芹」



「セ、芹の女じゃないし、勝手に決めないで!
もう!美咲とはぐれちゃったじゃない!どうしてくれんのよ!」



「大丈夫、俺のダチが面倒見てる」



「エエーー!へ、変なことしてないでしょうね!」



「んな事するか、ちゃんと家まで送り届けてるから心配すんな」



「もう…なんなのよ‥」


私は、びっくりしたのと、安心したのと、いろんな気持ちが混ざり合ってちょっとウルっときてしまった。



「真菜…泣いてんのか?」



「な、泣いてないし」



ぐっと唇を噛み締める。泣いてたまるか!



「ごめん」



そう言ったかと思うと、優しく抱きしめられた。


広く温かな胸だった。



私の背中にまわされた腕は、大きく優しかった。


ーーーって!
何感じてんの私!



「も、もう離して、帰る」



「わかった、送る」



ハァ-ーー
どっと疲れてしまった私は、送ると言ったコイツを断ることにも疲れ、何故か家まで送ってもらっていた。



バス停に向かう時も、バスの中でも、バスを降りて家に向かう時も、ずっと、芹は私と手を繋いでいた。



「じゃ、私の家、ここだから」



玄関先で私は芹に、そう言った。


私の顔を覗き込んだ芹は、私の唇に軽くキスをして‥



「これから…これからは、俺の胸でも、背中でも、何でも貸すから‥一人で、泣くなよ」



そう言って、私の頬にチュッとキスをすると



「また、明日」



それだけ言って帰って行った。


ハー-ー疲れた!


何なんだぁ-ー一人で泣くなって…アンタのせいなんですけどォ…


胸や背中や何でも貸すって…別に貸してもらわなくていいし…


何、勝手な事ばっかり言ってんのよォ…
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