不器用な君等の唄へ
Ⅰ
夏といえば、海。
「合宿しないの?」
栄に聞くと、透子が顔を上げる。
「…は?」
「てか、しようよ。」
「予算は?」
現実的問題を栄に突きつけられた。
夏休みでも部活はあって部室には扇風機ひとつ。
暑いったらありゃしないけど、あたしはメンバーより来る回数が少ないからなんとも言えない。
轟は楽譜から目を離さず、高橋は外で陸上部の練習に出てるし、矢祇は団扇でパタパタと扇いでいる。
「轟も行きたいよね、海!」
「海かよ、合宿じゃないのか。」
透かさずツッコミをいれる栄。