先輩の僕と後輩の君
プロローグ
『ついにこの日がやってきたか…』


母校のグラウンドの片隅にある体育倉庫の裏で、両手に大きな花束を抱えた男が、その20年と数ヶ月の人生の中で最大の緊張とともに誰かを待っていた。


見上げた校舎からは、二人が初めて会ったあの日と同じピンク色の雨が、とめどなく降っている。


今日は男の母校の卒業式。それとともに男がある人とある約束をした大切な日でもある。


コンクリートの段差に腰をおろした男は自分の高校時代をゆっくりと振り返った。


最後のHRが終わったのか、キーンコーンカーンコーンと卒業生への最後チャイムがなり響いている。


『そろそろだな。』


そう呟く男の声は、いつになく震えていた。


この血と汗と泥にまみれた男のむさ苦しい青春に、鮮やかな色がついたのは今から三年前のこの季節からだった…


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