先輩の僕と後輩の君
『あれは小3のころのことだろ。あんなんカウントされねぇよ。』


『でも涼子ちゃんって可愛かったよな。今はどこにいるんだろ?』


政樹は急にしゅんとした顔になってそう言った。


彼女とは小学校卒業後、家の都合で引越して以来音信不通になってしまっていたのである。


正直小学生のときの俺がもう少し大人だったら、あんなかわいい子と今でも連絡を取り合えたかもと思うと少し残念だ。


『まあ、過去の女は忘れて俺はかわいいかわいい後輩を探すとするかな…そらっ。』


『別にお前が付き合ってた訳じゃ…おりゃっ』


二人は通学路の最難関、別名「滑走路」と北高生から呼ばれる大和坂に差し掛かっていた。


たちこぎで飛ばす俺達。


最初の勢いと気合いもむなしく、徐々にスピードは低下し、ジグザグに進む自転車。


『ちょ、政樹ギブ。』


やはり坂の半ばで、俺はいつも通りのギブアップ。


政樹も数メートル先で自転車から降りていた。



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