先輩の僕と後輩の君
『お前山崎までとかだっさぁ。』


『うるせえお前だって川上に前輪がギリ入っただけじゃねえか。』


「山崎」「川上」というのは、俺達北高生ならばほとんどが知っている大和坂の左側にある家の名前だ。


山崎はちょうど坂の真ん中あたり、川上はその隣の家である。


『そういえばこの前サッカー部の神田が石崎まで上ったらしいよ。』


『すげぇな神田は。』


昔この坂を攻略した猛者がこの北高にはいたらしいが、自分達が知る限りでは石崎まで上った神田一位なのだ。


『ぜってぇいつかクリアしてやるぜ、俺が。』


『まぁ頑張ってみたら。ソウに出来るとは思えないけど…』


『今にみてろよ…』


歩きながらそんな会話をしているうちに、ようやく頂上にたどり着いた。


大和坂の上から北高まではおよそ50メートル。


正門の「都立山岡北高等学校」の文字まであと少しだ。


『んじゃソウちゃん、お先に〜。セイッ。』


『ちょ、まてこら。おい。』


政樹に遅れること数秒、正門から見える時計台の針がちょうど8時を指した瞬間、桜木奏は学校敷地内に自転車で飛び込んだ。



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