◆ 少年よ、大志を抱け!
「なんか変じゃなぁい?ハルちゃん」
おれがあーだこーだと悩んでいるうちに、
目敏い母親は気付いた。
ところで、いい加減ちゃん付けで呼ぶのはやめてほしい。
おれは母さんを一瞥すると
すぐにまた携帯に向き直った。
「何でもないよ」
「琴子ちゃんかぁ」
…なぜ分かった。
ニヤニヤしながら言う母親に問う。
それはもう、もちろん心の中で。
「メール?メールよね?さっきからずっと携帯見てボーッとしてーぇ。
ちょっと見せてよぉ、ねぇ」
見せてよ、と頼む言いぐさな割に
おれの手から勝手に携帯を取る母親。
あ、ちょ、待った!
…と言った時には遅かった。
一瞬にして母親の目が輝いた。
キラキラだ。乙女の目だ。
この時、おれの平凡な生活が、
がらがらと音を立てて崩れていった。