◆ 少年よ、大志を抱け!



「なんか変じゃなぁい?ハルちゃん」



おれがあーだこーだと悩んでいるうちに、
目敏い母親は気付いた。


ところで、いい加減ちゃん付けで呼ぶのはやめてほしい。


おれは母さんを一瞥すると
すぐにまた携帯に向き直った。



「何でもないよ」


「琴子ちゃんかぁ」



…なぜ分かった。


ニヤニヤしながら言う母親に問う。
それはもう、もちろん心の中で。



「メール?メールよね?さっきからずっと携帯見てボーッとしてーぇ。
ちょっと見せてよぉ、ねぇ」



見せてよ、と頼む言いぐさな割に
おれの手から勝手に携帯を取る母親。



あ、ちょ、待った!



…と言った時には遅かった。

一瞬にして母親の目が輝いた。
キラキラだ。乙女の目だ。



この時、おれの平凡な生活が、
がらがらと音を立てて崩れていった。



< 5 / 41 >

この作品をシェア

pagetop