Wissenschaft vs. die Magie
「コーヒーご馳走様でした」

私はまたモニタの方に向き直り、スイッチが入ったようにキーボードを叩き始める。

その様子を、空いたマグカップを手にした所長が覗き込んだ。

「また重力を利用した発明品かね?」

「いえ。重力はもう飽きました」

クスッと笑いながら私は言う。

…現在、並列型スーパーコンピュータを利用して開発しているのは、『時空転移装置』。

現在私達が存在しているこの現実世界とは別に、異なる世界が並列して存在する…いわゆる『パラレルワールド』の話は耳にした事があるだろう。

異なる文明、異なる進化、異なる人々が生きているかもしれない…陳腐な言い方をすれば、その『異世界』に干渉する為のシステム。

それが私が作ろうとしている時空転移装置だ。

ファンタジックな言い方をすれば、科学による召喚システム。

魔方陣を描いて呪文を唱え、別の世界から別の存在を喚ぶのは物語だけの話。

その物語だけの話を、私は科学の力で現実にしようとしているのだ。

< 5 / 130 >

この作品をシェア

pagetop