隠す人

二宮はそれを一瞥すると、路地の終点へ向けてスピードを上げた。
そこに踏切があり、警報機が鳴り始めている。
センチュリーはその踏み切りに突っ込む、と思いきや
直前で急ブレーキを踏んで、一時停止した。

「ああああ゛ぅっ!!!」
西刑事は慣性の法則に勝てず、もんどりうって前の座席に前歯を強打。

「踏み切りの前では、一時停止です」
二宮は涼しい顔で、完全に一時停止した車のアクセルをゆっくりと踏む。
左右確認も怠らない。

「法令順守は、秘書業務の基本ですから」
下がり始めた遮断機の下をギリギリくぐるように、車は踏み切りを通過。
後続のライトバンは、もはや付いて来れない。

「刑事さん、2008年6月から、後部座席のシートベルト着用は義務化されていますよ」

「どうもふみまへん・・・」
前歯を押さえながら、西刑事は謝るしかなかった。


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