隠す人

昨晩、俺は結局マンションの屋上にいた人影を捕らえ損なった。

二宮が誰かに狙われているという心配もあり、俺らは彼のマンションの戸口まで、彼に同行したんだ。
二宮は部屋に入る前、思い出したようにカバンの中から紙袋を取り出した。

「お二人は、これから夜通し張り込まれるんですか」

「えぇ勿論。それが、刑事って奴ですから」
この事件の第一被疑者が命を狙われるという事態に至り、もはや尾行なのか護衛なのかよく分からなくなってきた。

「そうですか、では」
二宮が、爽やかな微笑を浮かべて紙袋を差し出した。

「張り込みには、やはりこれかなと思いまして」
袋の中には、アンパンと牛乳。
お前、なんてベタなアイテムを。
しかしさすが秘書、なかなか気が利くじゃねえか。

俺らはそのとき、疑ってかかるべきだった。
あいつは、爽やかに微笑んだ。

「どうぞ、召し上がってください」

その笑顔の裏に、絶対何か裏があると疑うべきだったのだ。

くそっ!あの男、絶対に逮捕してやる!


「相棒」のテーマが、とうとう一周した。

原田がやっと電話に出る。
「なんだ、しつこいぞお前」

「原田さん、何時だと思ってるんですか」

電話は、鑑識の黒岩からだった。

「遺体の鑑識で、ちょっと気になる結果が出たんですけど。今から署に戻れませんか」


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