隠す人
西刑事は、ワイヤーラックの周りを調べ始める。
ラックに置かれていたであろう物品が、ラックの前に散らばっていた。
カラフルな野菜が表紙に書かれた本が、数冊。
「栄養士試験問題集」と書かれている。
「これは?」
「今度、その資格を取ろうと思っていたんです。社長の長期出張に同伴することも多かったのですが、そのときは私が食事を作っていたんですよ。栄養管理もする必要がありましたので」
・・・美音子さーん。この人、一人でも生きていけますよ、絶対。
西刑事が、何かを見つけて手を止める。
重なり合った問題集の一番下に、写真立て。
その枠の中で、美しい若い女性が静かに微笑んでいた。
キターーーーー!
秘書ロボットに、彼女がいた!
美音子さんに報告しないと。
ま、事件とは特に関係ないけど。
「キレイな彼女ですねぇ」
西はしたり顔で写真を二宮に見せる。
仏頂面して、やる時はやるんだぁ。
この、このぉ~。
二宮は、軽蔑しきった目で西を見る。
「・・・それは、母です」
「・・・それは失礼しました」