隠す人


室内を一通り調べたが、それ以降新たな物証は発見できず。

「盗まれたのは、パソコン1台、か」

「二宮さん、このようなことをされる心あたりは、本当にないんですか?」

「ありません」
涼しい顔で答える、二宮。

いつも、この涼しい顔に騙されている二刑事は、当たり前だが二宮の言葉は信用していない。

「いや、心あたりあるでしょ」

「ないですよ」

「また~、嘘ついちゃって」

「本当です」

「田舎のおっかさんが、泣いてますよ。そんな嘘つきに育てた覚えはないって」

「母は、ずっと前に死んでます」

「カツ丼でも、食べますか」

「いりません」

原田刑事は思わず、二宮の肩をつかんだ。
怒りというよりも、懇願に近かった。

「先日の植木鉢の件もある。あなた、そのうち本当に殺されますよ?いいんですか?」

こいつがシロだろうとクロだろうと、殺されていい命など一つもない。
それに、彼の身に万が一の事が起きれば、社長殺害事件の真相は永遠に闇の中に消えてしまうような気がした。

「あなたのことは我々が全力で守ります!だから本当のことを言ってください」

「・・・お気遣い、感謝します」

原田刑事の真剣な眼差しに、二宮は少し哀しそうな微笑を浮かべたように見えた。

しかしその後、彼の口が開くことはなかった。



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