隠す人


捜査本部内でも、「犯人は複数犯、一人は二宮」という結論で、概ね固まっていた。

殺される前の週から、社長と言い争っていたこと。

事件発生直後の、冷酷ともとれる冷静沈着ぶり。

事情聴取で、嘘をついたこと。

社長の遺体の状況から浮上した、「共犯者の可能性」。

尾行の刑事を何度も撒いていること。

しかもそのうち一回は、睡眠薬まで仕込んでいる。

これまでの状況証拠は全て、「二宮はクロ」だと言っていた。


だけど・・・

西刑事の中で、ずっとモヤモヤがくすぶっている。

「二人はとても仲が良かった」という、複数の証言。

二宮の、「社長秘書」という仕事に対する半端ではない思いの入れ様。

社長が二宮の首に手を回す(半分締め付けている)、あの写真。

二人とも、笑っていた。

あの部屋の、秘書のデスクの前で。

人懐こい一島社長は、いつもそんな風に、生真面目な二宮にちょっかいを出しては楽しんでいたのだろう。

その同じ場所で、本当に二宮が社長を殺したのだろうか。

西薫子の「刑事の勘」は、「二宮はシロ」と、小声で訴えていた。


どちらが本当かは、まだ分からない。





< 50 / 88 >

この作品をシェア

pagetop