隠す人
捜査本部内でも、「犯人は複数犯、一人は二宮」という結論で、概ね固まっていた。
殺される前の週から、社長と言い争っていたこと。
事件発生直後の、冷酷ともとれる冷静沈着ぶり。
事情聴取で、嘘をついたこと。
社長の遺体の状況から浮上した、「共犯者の可能性」。
尾行の刑事を何度も撒いていること。
しかもそのうち一回は、睡眠薬まで仕込んでいる。
これまでの状況証拠は全て、「二宮はクロ」だと言っていた。
だけど・・・
西刑事の中で、ずっとモヤモヤがくすぶっている。
「二人はとても仲が良かった」という、複数の証言。
二宮の、「社長秘書」という仕事に対する半端ではない思いの入れ様。
社長が二宮の首に手を回す(半分締め付けている)、あの写真。
二人とも、笑っていた。
あの部屋の、秘書のデスクの前で。
人懐こい一島社長は、いつもそんな風に、生真面目な二宮にちょっかいを出しては楽しんでいたのだろう。
その同じ場所で、本当に二宮が社長を殺したのだろうか。
西薫子の「刑事の勘」は、「二宮はシロ」と、小声で訴えていた。
どちらが本当かは、まだ分からない。