隠す人
「いつもご協力、ありがとうございます」
西は、脱いだ作業着を節子に返す。
「ほんとに、洗わなくていいんですか?」
「いいの、いいの」
節子は作業着を受け取ると、脇に置いてあった藍染の風呂敷包みを開いた。
「若い子が着たのを着たら、若返るかも」
節子は、西刑事の臭いがちょっときつい作業着を、大事そうに風呂敷の中にしまう。
風呂敷を結びなおしているうちに、風呂敷の中身が一部、外にこぼれ落ちた。
「ん?」
外に落ちたのは、みどり色の封筒だった。
形は大小、厚さも様々だが、どの封筒も「濃い緑色」という点で共通している。
節子が慌てて封筒を拾い集める。
西も、足元に舞い落ちた一枚を拾ってあげた。
「ど、どうもありがとモゴモゴモゴ」
節子は、明らかに動揺しながらそれを受け取ると、風呂敷の中にそれをねじこんだ。
「それじゃ、お先に失礼しますでモゴ」
節子は大慌てで部屋を出て行ってしまった。
後には、突然の出来事に呆気に取られている西が一人、取り残された。
「・・・あれ?節子さん?」