隠す人
6.隠す人
6.隠す人


「二宮!・・・おい、二宮!」

佐伯課長に何度も体を揺すられて、二宮はようやく気を取り戻した。

体を起そうとするが、体を走る激痛に思わず声を上げる。
肋骨にひびが入っているかもしれない。

「大丈夫か?」

「・・・大丈夫です」
痛みに顔をしかめながら、二宮は声を振り絞る。

佐伯課長に手を借りてようやく身を起すと、二宮は床に座ったまま書架にもたれて荒い息をついた。

「今、救急車呼ぶから」
携帯電話を取り出す佐伯。

「いえ!呼ばなくて結構です」

「お前な!そんなこと言ったって・・・」
佐伯課長は反撃するも、二宮の言葉に意外と力が入っていたので、少し安心したようだった。

電話をしまうと、床に落ちていたメガネを拾い、二宮に渡した。

何かの感情を込めた目で、二宮を眺める。

「二宮。・・・頼むから、命を大切にしろよ」



< 53 / 88 >

この作品をシェア

pagetop