隠す人


取調室に通された節子は、次第に落ち着きを取り戻した。

いや、正確に言うとカツ丼を食べ、茶を勧められるままに3杯飲み干した後に、ようやく落ち着きを取り戻した。

(よく食べる老人だな・・・)

原田刑事は内心呆れていたが、節子の動揺には何か、重大な事実が隠されているような気がして、節子が落ち着くのをじっと待つ。

最後のお茶を飲み干すと、節子はようやく、空になった茶碗をテーブルの上にコトン、と置いた。

「ふぅ、マンプクマンプク。ごちそうさまでした」

放っておくとそのまま帰りそうな勢いだったため、西刑事が慌てて話の口火を切る。

「で、節子さん。今日はなんで警察に来られたの?」

「あ、そうだった」

節子は思い出したように、膝に乗せていた風呂敷包みをテーブルに載せた。

「ちょっと・・・これを見てほしくって」

風呂敷包みの結び目に、手をかける。

身を乗り出す、原田と西。

「・・・会社の人には、内緒だよぉ」

「分かった分かった。内緒にするから」

内心、「じらすなよ!」と突っ込みを入れたくなる衝動に駆られるのをじっと我慢する。

藍染の風呂敷が、テーブルに広がった。

風呂敷の中身は、大量の濃いみどり色の封筒だった。




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