隠す人
「さあ、何でしょう」
二宮は少し考えてから、
「会社でしょうか。社長は、責任感の強い方でしたから」
そう答えた。
西刑事と原田刑事が、静かに二宮を見ている。
一瞬顔を見合わせてから、交互に話し出した。
「・・・二宮さん。状況証拠を積み上げていくうちに、私たちはある一つの仮定にたどりつきました。決定的な証拠がないので、仮定としか、今は言えないのですが」
「この脅迫状が捨てられていたのが、事件のちょうど一週間前。それと時期を同じくして、社長が自分のそばから遠ざけ、隠そうとしたものが、二つあります」
「・・・あぁ、奥様ですね。なるほど」
美音子がメープルシロップを買いに行くと言ってカナダへ旅立ったのは、ちょうどその頃だった。
まぁよくある事だったので、さほど気にも留めていなかったが。
その時、二宮はあることに気づいた。
・・・まさか。
体中に、身動きすらできないほどの衝撃が走る。
まさか、そんなはずは。
メガネの奥の瞳を大きく見開いたまま、二宮はゆっくりと二刑事を見た。
「その通りです。そして」
「・・・もう一つは、お気づきのとおり」