隠す人
「・・・私を追い出すためにドアを開けた社長が、慌てて私に駆け寄ってきました。
外に引きずり出されるのかと思い身構えたのですが、そうではなく・・・
突然私を、抱きしめたんです。
同時に銃声が聞こえましたが、
あまりにも突然の出来事で、
何が起きているのか、なぜそうされているのか分かりませんでした。
尋常ではない強い力で押さえ込まれて、
私はただ、されるまま突っ立っていました。
社長はそうしながら、たった一言だけ言いました。
『じっとしてろ、何も見るな』と」
「・・・それが、あなたが隠していた真実、ですね?」
二宮が、静かにうなずいた。
一島社長に残された銃痕が、全て同じ角度だったこと。
それが物語っていたのは、共犯者の存在などではなかった。
社長が強い決意で守り抜いた、大切な者の存在だったのだ。
二宮が、原田刑事をまっすぐに見た。
その目に、もはや迷いはなかった。
「お二人に、渡したいものがあります。今夜8時、地下2階の駐車場で」
(7.大切ナモノ 終)