隠す人


静かな室内。

きれいに片付けられた秘書のデスクに、座っている二宮。

「・・・」

飴色に輝くデスクの天板を、名残惜しそうになでる。

ドアがノックされた。
我に帰る二宮。

「どうぞ?」

顔を出したのは、原田刑事と西刑事だった。

「今日、ロンドンに発たれるそうですね」

「えぇ。立ち入り禁止の解除が間に合ってよかったです。まだ私物が残っていたので」

「まぁ、あなたは結局、毎日出入りしてましたけどね」

西刑事が、イトウニシキの水槽を眺める。
今日も元気に泳いでいる。

「イトウニシキは、誰が面倒を?」

「え?・・・あぁ」
二宮は、困ったような笑みを浮かべた。

「・・・山形に出張に行ったとき、ちょうどそこで村祭りがありまして。これは、露店の金魚すくいで、社長が捕まえた金魚です」

「え?てことは・・・」

「はい、ただの金魚です」

「えぇ~?!」
驚く西刑事に、原田刑事はあきれ顔。

「おめぇ、こいつがここにUSBメモリ隠してた時点で、気づけよ!俺たちがこの水槽に近づかないように、嘘ついたのさ」




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