隠す人
「捜査を妨害するようなことばかりして、申し訳ありませんでした」
素直に頭を下げる二宮。
「まぁ、新たな被害者が出なくて、良かったですよ。それにしても」
ある事を思い出し、また怒りがこみ上げてくる原田刑事。
「アンパンに睡眠薬は、やり過ぎですよ?ありゃぁ、厳密に言えば公務執行妨害ですわ」
「・・・は?」
二宮が、目を丸くした。
「アンパンに睡眠薬って・・・何のことですか?」
二宮の顔は、嘘をついているような素振りには見えない。
「あれ?あなた、アンパンに睡眠薬を入れませんでした?」
「いくら私でも・・・そこまでしませんよ!」
顔を見合わせる二刑事。
あれ?
じゃぁ、あの夜の張り込みのときに、二人とも寝てしまったのは・・・
「自らの怠慢を、人のせいにしないでください」
二宮の、冷たい視線が二人に刺さる。
ここは、素直に謝っておいたほうが得策だ。
「・・・すみませんでした」
「・・・まあ。これで、お互い様、ということで」
二宮が軽くため息をついた。
「・・・最後に一つだけ、お尋ねしたいのですが」
原田刑事が、口を開く。
「あなたは、一島社長が自分の父親だと、最初から分かっていたんですか?」
二宮が、窓の外を眺めた。
「・・・はい」