隠す人

「捜査を妨害するようなことばかりして、申し訳ありませんでした」

素直に頭を下げる二宮。

「まぁ、新たな被害者が出なくて、良かったですよ。それにしても」

ある事を思い出し、また怒りがこみ上げてくる原田刑事。

「アンパンに睡眠薬は、やり過ぎですよ?ありゃぁ、厳密に言えば公務執行妨害ですわ」

「・・・は?」

二宮が、目を丸くした。

「アンパンに睡眠薬って・・・何のことですか?」

二宮の顔は、嘘をついているような素振りには見えない。

「あれ?あなた、アンパンに睡眠薬を入れませんでした?」

「いくら私でも・・・そこまでしませんよ!」

顔を見合わせる二刑事。
あれ?
じゃぁ、あの夜の張り込みのときに、二人とも寝てしまったのは・・・

「自らの怠慢を、人のせいにしないでください」

二宮の、冷たい視線が二人に刺さる。
ここは、素直に謝っておいたほうが得策だ。

「・・・すみませんでした」

「・・・まあ。これで、お互い様、ということで」

二宮が軽くため息をついた。


「・・・最後に一つだけ、お尋ねしたいのですが」

原田刑事が、口を開く。

「あなたは、一島社長が自分の父親だと、最初から分かっていたんですか?」

二宮が、窓の外を眺めた。


「・・・はい」




< 83 / 88 >

この作品をシェア

pagetop