隠す人

部屋に一人、残った二宮。

イスに座りなおすと、デスクの引き出しに手を伸ばす。
二段目の引き出し。

何も入っていない。
・・・ように見えたが、底のわずかな窪みに手をかけると、底のように見えていた部分が外れた。

二重底になっていたのだ。

そこに、写真が一枚入っていた。

二宮は、それを取り出して眺める。

社長が二宮に抱きついている、あの写真だった。

あの時。
背中に感じたぬくもりが、疾風のように蘇った。





「アハハ!社長、いい感じです!もっと笑ってぇ~」

社内広報用の写真を撮っているはずの、隣の社長室があまりにも騒がしい。

「すみません、もう少し静かにしていただけませんか」

社長室に顔を出すと、なぜかボディビルのポーズを取っている一島社長と目が合う。

「・・・社長?」

「いやね、星野さんが社内広報用に、楽しい感じのポーズを取ってくれって言うから」

「・・・星野さん!社長はすぐに調子に乗るから、やめてくださいよ」

「こんなのはどう?」

今度は四つんばいになり、上目遣い。

「あ!社長、それもいいですね、いただきます!」

楽しいスイッチが入ってしまった二人は、二宮抜きで盛り上がっている。

「・・・」

こうなるともう、社長は歯止めが利かないことを二宮はよく知っていた。

二宮はあきらめて、前室に戻る。

デスクに向かい仕事を始めると、社長室から視線。

扉の隙間から、一島社長と星野がこちらをのぞいている。

「・・・何か?」



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