猫男
「あなた猫男でしょ?」無言。

「聞いてるの!?」
やはり無言。

「答えないと兵士さん呼びに行っちゃうよ!」
何も答えない。


「ねぇえええええ!」
ナオミは地面に倒れ足をばたつかせた。女を捨ててまで。

猫男は鳥肌が立ったような顔をし、手を離し後ろを振り向いた。

「お嬢さん、落ち着いてくれ。俺が悪かった!」
ばたつかせるのをやめ、ナオミは猫の方を向く。

「猫男でしょ?」

「世間からそう呼ばれているよ。」

「なんて名前なの?」

「猫男」

「あなた、元々にんげんじゃなかったの!?ちゃんとした名前あるでしょ!?」

「人間だったよ!でもね…あいつのせいで俺は俺は…」猫男は頭を抱えしゃがみこんだ。
どうやら猫の顔になったことでずいぶんトラウマになっているらしい。

ナオミは悪いことをしたような気分だったので慰めようと適切な言葉を探した。

「猫の顔でも可愛い気がするけど」


あっあっ…俺は一生美しくないと…女でも男でも通用するような美しさを求めてるのに…うっうっ…こんなの俺のオリジナルじゃない…


ナオミはめんどくさくなってきていた。想像していた猫男と違ってギャップが大きかったせいもある。


「早くしないと追っ手がきちゃうわよ」

猫男は思い出したように頭から手を少し浮かせてから、手をゆかにつき、立ち上がり服のほこりをはらう。

「そうだった」

猫男は帽子を取り、ゆかにおいた。猫男は帽子の内側にあるポケットを開けそこから小さな空の瓶と風船を取り出した。

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