猫男
ジョニーは魚屋の「魚人」という店の看板娘にしりを敷かれていた。


「やぁ。僕の小鳥ちゃん、今日も可愛いねぇ」ジョニーは店の娘を視線を向けて話す。とてつもない熱いまなざしだ。娘は顔を合わせないようとしたが、つい目が合ってしまい嫌そうにジョニーの顔を見る。それでも彼はニコニコと娘を見つめる。宝石のように目をキラキラさせながら。仕方なく娘は切り出す。


「ああ『トビウオ』のことかい?さっき仕入れたばっか!新鮮なトビウオは舌が踊るほど旨いよ!スープにどうよ?」


そう言うと彼女は計量で透明な袋に入った魚を計って中太りのヒラヒラの帽子の似合うおばちゃんに値段を言い、金と引き換えに袋を渡す。おばちゃんは親切そうにありがとうと言い立ち去る。

「このトビウオちゃんも可愛いね。でもこの子よりエスターシャのほうが美しいよ」とジョニーはにこやかに言う。そして花を差し出す。

「はいはい。嬉しいけどナンパならお断りだよハンターさん。お花受けとるから買わないなら帰っておくれ」


そう言うと彼女——エスターシャは顔を上げ彼を一目見るとしかめっ面をする。するとまな板の上に乗った巨大な魚の角切りをノコギリのような包丁で切り落とす。
だが、ジョニーは一歩たりとも表情を変えない。
「さっき君の躍りを陰で見てたよ。君は踊っているときが一番魅力的だ。まるで…色とりどりの花びらを舞う鳥のようにね」


< 7 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop