一言が。
リーダー
「あんた、凉野里麻(すずのりま)?」


ふと、誰かに名前を呼ばれた。

「はい。そうですけど…何か?」


「名札、落ちてた。」


あれ?名札なんかいつ落としたんだろ。
それにこの人、見たことあるんだけど名前が思い出せない。

「あ、そう。えーと、とりあえずありがとう」


「うわぁ、拾ってくれた人にそんな態度フツーとらないっしょ…」


わざとこんな態度をとってるわけじゃない。
もともとこういう性格だ。

「…えっと、ごめん。」


「暗いなー。こっちまで気分下がるわ。」



な、なんなんだこの男…。だいたい好きで暗くなった訳じゃない。

明るくはしゃいで、でしゃばればでしゃばるほど恥をかく。
私はムードメーカーになれるような人間ではなかったのだ。

「うるっさいなー。暗いから何?じゃあ早く私の前から立ち去ればいーじゃん。」

「…お前、目の前にこんなイケメンがいんのに立ち去れって…変わってんな。気に入ったぜ!」



「気に入った?…あのねぇ、世界は君を中心に回ってる訳じゃないんだから、自己中もほどほどにしなよ。あと君の顔、好みじゃないよ。」


あ、長々としゃべっちゃった。
目の前の男は口を開けてポカンとしている。


「…ぷっ!ははっ!ますます気に入った!!あと、君じゃなくて吉瀬洸(きちせこう)。名前、覚えろよ?じゃな!」



なんだったんだ、あの男は。
あ、もうすぐ一時間目が始まる。

私は重い足取りで教室に向かった。
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