お前のためなら死んでやる3
「ん…」
「優音?大丈夫か?」
「………だい、じょうぶ」
桜咲の苦しみは、こんな痛みなんかじゃ計りきれない。
あたしが救いたかった。
黒く染まっていきそうな小さな男の子をあたし色に染めたかった。
まだ、綺麗だったあの頃のあたしの心を桜咲にわけたかった。
だから抱きしめた。
「優音、抱きしめるとお母さんの体温と同じになるね?」
いつかに言った母の言葉を幼いあたしは信じていた。
抱きしめて、一人で凍えるあなたの心を。
抱きしめたら寂しくないでしょ?
「ママは温かいのに、一人だとどうして冷たいのかな?」
あたしを温めてくれた人が死んだ時、あたしは人の冷たさの理由を悟った。