あの虹をくぐれたら
「あ。」
「あ。」



二人同時に声を上げた。



雨がやんだ。



夏特有の通り雨だったようだ。



水平線がくっきり見える。



だんだん雲は晴れていき、太陽が顔を出したときだった。



「あ、虹だ!」



彼女は子供のように無邪気に虹を指差して言った。



ホントに綺麗だった。



まるでこの世の終わりを見たような…



そんな感じがした。



「ねぇ、虹くぐってみたいと思わない?」



「それは無理だろうなぁ。虹ってさ、自分でホースで作ったような虹じゃないかぎりくぐれないらしいよ。」



「そうなんだ。」



「うん。」



「いつかくぐってみたいね、虹。」



「うん。」





暫く何も話さずただ二人でじっと虹を眺めていた。



時間が経つのも忘れて。



虹が消えたのは夜になっての事だった。










僕らが家に着いたのはもう遅かった。



楽しかった思い出に浸りながら僕は熱いお湯がはられた湯舟につかった。



次の日、彼女は僕の前に姿を見せなかった。






風邪をひいたらしい。




携帯にいくら連絡しても返事はなかった。



家にも行った。



けれども両親に勘当されて終わった。





その数日後だったかな彼女がこの世から
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