Gallery-Back Yard-へようこそ!
食堂前に立っていたレナンドが
心得たように一礼して
ドアを開く。


「ヴィンセントさま、バレリーさまと旦那様をお通しします」



中では長いテーブルに食器がずらっと整列していた。


リヨンは手伝いを終えたのか
控えめにヴィンセントの後ろに立っている。



「バレリーおっせぇよ!!
つかオヤジも!
何ちゃっかり帰ってきてんだよ」



予想通り、毛を逆立てた猛獣のようなヴィンセントが
食卓に肘をついて待っていた。



「あの後予想以上に早く終わってね。
なんだい、パパと一緒に帰りたかったのかい?」


「なっ……!」


瞬間、りんごのように真っ赤になったヴィンセントが
息を吸い込む。



「ばっかぢゃねー?!
パパとか気色いこといってんなよ!」



「恥ずかしがり屋でいけないな、ヴィンセントは。
なぁバレリー?」


同意を求められ、バレリーはちょっと困った顔をしたが
確かにそういうところもあるとも思えたので素直に頷く。



「まぁそれは一理ありますね」



「バレリーてめっ
誰の見方だよ!」



「坊ちゃん」



固い声が割り込む。執事兼教育係のレナンドだ。



「食卓では、お静かに」



微笑んだ顔が怖いよ、レナンドさん……。



ヴィンセントも同じように思ったのか
リヨンが起こした椅子に
大人しく腰かけた。


ベルナールも主たる一番奥まった席へ掛ける。



「あの、
バレリーさまもどうぞこちらに」


ヴィンセントの向かい側に周ったリヨンが
うやうやしく椅子を引いた。



「ありがとう」



にこっと微笑んでバレリーも腰掛けた。


パンパンと手を打ったレナンドの合図とともに
侍女たちが前菜を運んでくる。



「さぁ食事を始めようじゃないか」



掲げた食前酒に口をつけたベルナールは勢いよく
それを飲み干した。


「オヤジ、頼むから酔っ払うなよ」



「ハッハッハ、このくらいじゃ酔わんさ。
さあ、バレリーも遠慮なく食べなさい」


「はい、いただきます」



そのまま副菜、メイン、デザートまで
件の地中海の大洞窟話をしながら
和やかに進んだ。
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