Gallery-Back Yard-へようこそ!
ヴィンセントの隣に腰掛けると
ふわっとした感触がズボン越しに伝わる。



さっすがブルジョワ階級
作りが違うや。



動き出した車内でヴィンセントは
見るともなしにそんな
バレリーを眺めていた。


「ってかお前、ひでぇカッコだなオイ」

「え?
そう、かなぁ?
普通にシャツとズボンだけど」


さすがにエプロンは変かな、
などと言いながら首から外しているが
ヴィンセントが言いたかったのは
根本的なところだった。


とにかくくせっ毛はハネ放題だし
顔に絵の具が付いてるわ
白シャツにはシミがあるわで

とにかくまぁ酷い。


「お前……、
飯食う前に着替えろよ。
オレの服貸してやるから」


「ええ? そこまではさすがに悪いからいいよ~」


「アホか、オレがイヤだっつーの!」


ええ~?
などとのたまう友に、
ため息を吐きながらヴィンセントは
カーストギャップを感じていた。



そうこうするうちにも
車は走り、ボワール家の門が見えてくる。


どっしりとした
ロココ調の建物は
いかにもセレブリティ溢れる屋敷だ。


一旦運転手が降り、門を開けると
庭を抜け、玄関まで横付けされる。



「お帰りなさいませ、坊ちゃま」


髪をキッチリ撫でつけた若い執事が
ドアを開ける。


「む、オヤジは後から帰ってくるから」


「はい、お電話にて既に賜っております。
……そちらは、バレリーさまで?」


「どうも、レナンドさん。
お久しぶりです」


バレリーはにこっと青年に笑顔を向けた。


それこそ執事のレナンドが
今のバレリーたちと同じ年だった頃から知っているので
もう顔なじみだ。


「はい。お久しぶりでございます」


鉄壁の無表情だったが
それでも少しだけ
それが緩んだ気配がするのは
バレリーの思い過ごしだろうか。



「では昼食は2人分用意させましょう。
少し待てますね、坊ちゃま?」



「う……、仕方ない」


レナンドからはひしひしと、あなたのせいです、といった空気が伝わるので
ヴィンセントも文句は言えまい。
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