Gallery-Back Yard-へようこそ!
これまた立派な扉をくぐると
5人くらいの執事やメイドが口々にお帰りなさいませ、
と言った。


バレリーももう慣れてしまったが、
初めてここへ連れてこられたときは
とにかくビックリしたものだ。


レナンドを初め、
今ではもう
ほとんどの使用人とは既に顔なじみだ。


あれ……
あんな小さな子いたかな?



その中に
バレリーたちよりさらに年若な執事がいた。



少年というに相応しく、蜂蜜色の目がくりっと大きい。

髪は薄茶色の巻き毛で
顔をくるりと縁取りいかにも愛らしい少年だったが
俯き気味の視線がオドオドと落ち着きなくさ迷っている。


お仕着せもサイズがないのか
彼はシャツにベスト、
首にはリボンタイという出で立ちだ。



「ヴィンセントさま、お帰りなさいませ。
上着をどうぞ」


うやうやしく手を差し出す様は
いかにも新人らしい。



「リヨン、そんなに張り切らんでもいいっ。
上着くらい自分で脱ぐ」


「す、すみません! ヴィンセントさま」



「ヴィンス、この子は新しい執事さん?」



「ああ……、バレリーは初めて会うんだったな。
1ヶ月ほど前に孤児院から来たんだ」



「ヴィンセントさまのお世話係りをさせて頂いてます、
リヨンと申します」


ぎこちない笑みを浮かべ
90℃の会釈をするリヨンを
なんだか弟のようで可愛いな、とバレリーは思った。



「バレリー=レックスです。
よろしくね、リヨンくん」



「リヨン、こいつはオレの友人で絵画の修復師やってんだ」


「や、修復師はあくまでバイトなんだけどな~……」



「そう……なんですか」



そう言ったリヨンの顔は
心なしか色を無くしたように見えた。




なんだろ、
僕が修復師だったら何かまずいのかな……?



「さぁ、坊ちゃん、バレリーさまも
どうぞ食堂のほうへ」



その時ちょうどレナンドさんに誘導されたので
結局聞けはしなかったが。
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