Gallery-Back Yard-へようこそ!
続きを待ったけれど
結局それ以上リヨンが
口を開くことはなかった。



横目でリヨンの様子を窺ったが
淡々と着替えの手伝いをしているだけだった。


ふわっとした茶髪で
隠れた表情までは窺い知れ無い。



なーんか変だなこの子。



最後にキュッと
緑の帽子を被り直すと
2人は部屋を出た。


相変わらず俯き気味のリヨンと階段を降りていると
階下から低い声が掛かった。



「やあバレリー、お店の調子はどうだい?」



「ベルナールおじさん!」


タッとバレリーは階段を駆け降りる。


「お、おかえりなさいませ、旦那様」

後を追ってきたリヨンは
慌てて90度のお辞儀をする。



ベルナールはヴィンセントの父であり
一代で貴族にのし上がった強者でもある。


ヴィンセントによく似た
切れ長の目だったが、
やはり右目元の泣きぼくろが
彼を幾分優しそうに見せてくれる。


バレリーはこの細身で長身のベルナールおじさんが大好きだった。



「お久しぶりです、おじさん!
お元気でしたか?」


「君こそ元気そうだね。
今日は帰りヴィンセントに拾われたんだって?」



「拾われたなんて酷いなぁ、
猫じゃないんですから」



口を尖らせるバレリーに
はははと笑ってベルナールは言う。



「腹を空かせた猫と同じようなものじゃないか」



「……なんだかこの家での扱いが
ひどくなってませんか?」
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