Gallery-Back Yard-へようこそ!
息子ともども
面白がっているとしか思えない。


「それより、ヴィンセントが待ってるんじゃないのかい?
腹を空かせたあいつは猫なんて可愛いもんじゃないぞ」



ハッハッハと明るく笑い飛ばしてくれるが
バレリーはさっと顔色を青くした。



確かにお腹を空かせたヴィンスは
猫ってゆーより
ライオンぽいかも……。



「は、早く行かなきゃ!」



「ちなみに私もご一緒してもいいかな?」



「もちろん!
おじさん、今日はお時間いいんですか!?」



「今日は午後からの仕事にまだ余裕があるからね。
たまには息子たちとのスキンシップも大事にしないと」



片目を瞑って言うベルナールは
とても四十路前には見えない。



「リヨン」



「はっ、はいっ、旦那様」


急に名前を呼ばれ
びくっとしたリヨンは
慌てて返事をする。


「悪いが先に行ってレナンドの手伝いをしてやってくれ。
急に私が同席することになったのに慌ててるだろうから」



「かしこまりました、すぐ、行ってまいります」



リヨンが行ってしまうと
ベルナールとバレリーはゆっくり食堂に向かって歩き出す。


「ベルナールおじさん、今回はどちらに行ってたんですか?」



ベルナールの仕事は近隣諸国を周る貿易商だ。

バレリーが想像もつかないような話を
会う度に聞かせてくれる。


砂漠のアリ地獄に呑まれそうになったとか、

バルト海のウミヘビの大捕り物劇だとか、

ホントかウソか、どちらとも判断つかないが
間違いなく面白い。


「地中海にな。
あちらは素晴らしい真珠の宝庫でね。

今回は大洞窟の探検物語だ」



「洞窟?! 早く聞きたいなぁ」


さすがに昔のように
わーい、と喜ぶ年でなくなったけれど
それでも楽しみには変わりない。



「まぁまぁ慌てるな。
まだ時間はあるさ。
ゆっくり食事でもしながら
話てあげよう」



他にも
あの近所に住み着いてた猫はどうしてるか、
ああもうおばあちゃん猫ですよ、とか

奥様は今日はどうしてるか、
茶会に行っているはずだ
とか
他愛もない話をしているうちに
食堂に着いていた。
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