紡歌<ツムギウタ>

そこは、優雅の告別式の会場だったのだ。


正面には優雅の写真が、色とりどりの花に囲まれて掲げられている。その会場には、たくさんの人々が参列していた。


……奇妙な感じだった。自分の告別式が自分の目の前で行われているなんて。


ここに座っている人たちは、自分には目もくれず、自分の写真に向かって涙を流している。


優雅は人々が三列にならび、順番に焼香するのを眺めていた。


懐かしい顔ぶればかりだ。


小学校時代の友人、中学時代の担任の先生、高校時代のクラスメイト、そして芸能活動を始めてから知り合った芸能人達。


その中に、岩見、碧、達也、廉も並んでいる。


その4人が焼香する姿を見ていた優雅は驚きのあまり、目を見開いた。



一瞬の出来事だったが……


四人のうちの一人……その人物は、確かに優雅の遺影に向かって笑ったのだ。



優雅の後ろに立っていたキズナもそれに気付いたらしく、その人物が席に戻るのを、じっと睨んでいた。




告別式が終わり、四人を乗せた車が再び発進したとき、すでに少し欠けた月が空で輝いていた。


車は三人をそれぞれの自宅へ送り届けた後、岩見の自宅で止まった。


四人がそれぞれ車を降りた時……そのうちの一人だけ、他の三人とは違った。後ろに二人の霊を引き連れていたのだ。


優雅の遺影の前で笑った、あの人物。




家に入ると、殺風景な部屋がその人物を出迎えた。どうやら、一人暮らしのようだ。


その人物は電気もつけずに冷蔵庫を開け、水を一杯飲むとベッドに座り込んだ。


そのベッドの隣にある机には優雅、達也、廉、碧が写った写真が写真立ての中に収められ、立てかけられていた。



「優雅……お前は死んで当然なんだよ」



その人物は四人の写真に向かって呟き、電気をつけた。



そこにいたのは……


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