知らなかった僕の顔
彼女たちの中の都合のいい僕
僕は、自分を嘘つきだと思ったことはない。

優しいなどと思ったこともない。

バカかと思うことは、四六時中だ。


僕と付き合う女の子は、みんな僕に夢中になった。

自慢をしているわけではない。

そもそもみんなって何人よ?って話だ。

言ってしまえば、二人だ。
自慢どころか、むしろ少ない。

最初に付き合った女の子は、僕を優しいと言った。

次に付き合った女の子は、僕を楽しいと言った。

どちらも僕にはピンとこない言葉だったけど、最後に言われた台詞は同じだった。

「宮田くんは、私のことを好きじゃない」

僕は、混乱した。

でも相手にそんなことを言わせた原因は、僕にあるのかもしれない。

「そんなことないよ」と言ってみた。

僕を優しいと言ってた女の子は、「嘘つき」と呟いて少しだけ笑った。

二人目に付き合った女の子は、こう言って僕から離れていった。

「光男くんといると楽しいよ。でも楽しいと思ってるのは私だけなんだって気付いた。光男くん、本当は私のことを好きじゃないよね?」

僕は、途方に暮れた。

なぜなら僕は、最初から最後まで同じ気持ちでいたからだ。

いつも取り残されるのは僕の気持ちで、変わっていくのは彼女たちの心だと思っていた。

僕は、恋に失望する。

恋なんて幻想じゃないか。
彼女たちは勝手に作り上げた最高の僕に、いったい何を期待するのだろう。


恋なんて、もういい。

面倒なことはしたくない。
そんな不健康なことばかり考えていたのは、若干十九の夏だった。

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