知らなかった僕の顔
まず彼女はチリカミに徐光液を含ませ、手の爪に塗っていたオリーブグリーンのマニキュアを長い時間をかけて丁寧に拭き取る。


キュッと口を閉じた彼女の真剣な表情を僕は黙って見ている。


それが終わると一度立ち上がり、手を洗いに台所へ行く。


それからが、色の消えた爪に塗るマニキュアをじっくりと選ぶ時間だ。


僕は、急に思いついたことを口にした。


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