知らなかった僕の顔
画面には、日本代表が国家を斉唱している場面が映し出された。


矢島さんは、急にしゅんとなり、ビールを一口飲んだ。


「森若ちゃんも、サッカーが好きなのかい?」
矢島さんは、小声で森若ちゃんに聞いた。

「好き」
森若ちゃんは即答する。


矢島さんは、ゆらりと立ち上がって言った。


「君たちの邪魔をしてごめんよ。俺は帰るよ」

矢島さんは、千鳥足で玄関へ向かう。

「またね、矢島さん」
森若ちゃんが言った。


玄関のドアがバタリと閉まる音がした。


「ちょっと可哀想だったかな」
僕は、呟いた。

「大丈夫だよ。矢島さんは、めげないから」

「確かに」

そして僕らは、試合に集中した。


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