知らなかった僕の顔

絶対にたいしたことではないはずだと思いながらも、胸の中は変にざわついていた。


「長谷川さぁ…それ、どこで見たか思い出してくれよ」

「えぇぇーっ？」
長谷川が、いかにも面倒な顔をする。

「覚えてねえってば…ん、ちょっと待て……俺、そん時酔っててな、家から少し離れた所の自販機にタバコ買いに歩いて行ったんだよ。あー、そうだそうだ。だからそこだよ」

「どこだよ」

「ハマナス通りにある自販機の近くだよ」


ハマナス通りには、森若ちゃんのアパートがあった。

僕は、まだ足を踏み入れたことのない彼女の部屋を想像して、複雑な気持ちになった。