知らなかった僕の顔

「矢島さん、いい体っすね」


「そうかい？野球のおかげかな」

「ああ、オサムジャパン」

「そうそう。まあ、今は遊びの草野球だけど、昔は甲子園目指して本気でやってたからね」

「甲子園か。高校球児の憧れですね」

「俺ね、その辺じゃ名の知れたエースピッチャーだったんだよ。周りからはチヤホヤされて、相当いい気になってたな」
矢島さんは、苦笑いして言った。

「へぇー、すごいピッチャーだったんだ」

「すごかったよ。自分は無敵だと思ってたからね。でもそれに輪をかけて、態度もでかかった。誰も俺に逆らえなくて、みんなビクビクしてたよ。そんな独裁者のいるチーム、宮田くんなら辞めるでしょ？」

「辞めますね」

矢島さんは「わかるわかる」と笑いながら、即答した僕の汗で濡れた肩をピチャピチャと叩いた。