知らなかった僕の顔
「なんだか今日は、月が大きく見える」
見上げた夜空に、彼女は呟く。


「ホントだ…異様にでかい」


彼方にあるはずの月が、僕らのすぐ目の前にいた。


「月の模様ってさ、ウサギが餅つきしてるようには見えないよね?」
前から思っていた疑問を僕は口にする。


「うん、見えないよね。私には『スクリーム』で、殺人鬼が被ってたマスクに見えるんだけど」


『スクリーム』というアメリカのホラー映画は僕も観たことがある。
不気味なマスクをつけた殺人鬼が、次々に人を殺し町を恐怖に陥れるという内容の映画だ。


僕は、ジーッと月を見た。

「うわっ!見える。あのマスクだ」


「でしょ?」
森若ちゃんは、満足そうに僕を見た。


「あれが目でー、その下に叫んでるみたいな口があってー」
月を指差して説明する森若ちゃんを僕は見ていた。


夜空に浮かぶ大きな月の妖しい光が、森若ちゃんの銀色の髪を照らしている。


僕はずっと眺めていたかった。


そしてその光景は、いつまでも忘れられない僕の記憶になるような気がしていた。
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