知らなかった僕の顔
バイトを終えて、アパートに帰ろうとする僕に阿部ちゃんが言った。

「宮田くんのアパートって、ここから近いんだよね?」

「うん、歩いて5分だよ」

「遊びに行っていい?」

僕はまた、返答に困る。

女の子は男をもっと警戒すべきだ。

色んな意見があるけれど、僕は男女の友情は成立しないと思ってる派だ。

僕の場合で言えば、友達関係を築いていくには、相手に魅力を感じなければ続いてはいかない。

異性の友達にも、同じことが言える。

魅力を感じる異性の友達に対して、いつしか恋愛感情が生まれる確率は非常に高いはずだ。

僕はそのことを否定するわけじゃなくて、だからこそ男女の友情は成立しにくいと思っている。

友達としての関係が、恋愛感情に変わり、両思いになれれば、めでたしだ。

でももし好きな女の子に、友達としてしか見られないと言われたら、僕は諦めるしかない。

友達としてでもいいから一緒にいてほしいと言ってしまうのは、その先の関係が嘘になる。

そんな永遠の片想いは苦しい。

僕は、なるべく女友達は欲しくない。

女の子のことは、できれば最初から異性として意識していたい。

こんな僕の考えを「潔癖だ」と笑う人もいた。


「あのさ、今部屋がすごく散らかってるんだ」
僕は、適当な理由を作った。

「そんなの全然気にしないよ」
阿部ちゃんは、豪快に笑った。

「うん、でもごめん。また今度。じゃ、おつかれ」

「はーい、おつかれー」


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