知らなかった僕の顔
部屋に着き、コンビニのハンバーグ弁当を食べていると、携帯の着信音が鳴った。


高まる期待を胸に携帯を取ると、そこには『長谷川』の文字。お前かよ…。


「もしもし?宮田ぁ?元気か?」

「元気だよ。どした?」

「暇なお前が、部屋で干からびて死んでないかの確認だ」

「暇じゃないよ。ケーキ屋でバイト始めから」

「ケーキ屋?!ああ…まあ…なんかお前っぽいな」

「長谷川こそ毎日何してんの?」

「なーんにも」

「…そうか。あっ、お前、さなえちゃんとはどうなった?」

「…」

「夏を味方にできたのか?」

「夏って…気まぐれだよねぇ…」

「…味方じゃなかったんだな」

「もう少しってとこだったんだよ。二次会終わって、俺の部屋でテレビ観ようってことになってな」

「テレビ?わっざとらしい口実だね」

「違うよ。俺が言ったんじゃないよ。さなえちゃんが、毎週観てる番組を見逃したくないって言うから、じゃあ俺のアパートの方が近いから一緒に観ようかってことになったんだよ」

「うんうん、で?」

「ほんで、二人で俺のアパートに向かって歩いてたら急にさなえちゃんが、やっぱり帰るって言うわけよ」

「うん、それで?」

「わかった、じゃあねって別れてそれっきりだよ」
長谷川が、ふてくされたような声で語る。

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